スウィングソーイング、2023、東京、日本
スイングソーイング、2023
9月26日— 2023年10月1日、アートセンター・オンゴーイング、東京
Seohee Kim(ソヒ・キム)は1991年韓国・ソウル生まれ。2016年にイギリスのロンドン・カレッジ・オブ・ファッションでファッションデザイン学士号を、2018年にはロイヤル・カレッジ・オブ・アートで修士号を取得。現在はソウルを拠点とするファッション研究者・アーティストです。2ヶ月間のOngoing AIRに参加、本展は彼女の成果発表展となります。
今夏、異例の暑さの中、Seoheeは東京でのリサーチと体験をもとに、衣服や他者との境界線、そして空間の視覚的表現にまつわる複雑な関係性について探求してきました。彼女は「東京の活気と上昇する気温が自分の身体に消えない印象を残した。肌を日焼けさせ、袖のない服を着て混雑した街を歩いていると、異様な違和感と不安を感じた」と話してくれました。明確に定義できないこの微妙な違和感は、彼女が吉祥寺の狭い通りでバスを待っている際、列に並んでいた人々が長袖を着て、スカーフを巻き、日傘をさしている情景を目撃した時に訪れたのだと言います。中でも、「日傘」という存在は、街の中で個人的なスペースを確保したいという意思と共に、外部からの保護を求めるための静かな主張とも思えたのでした。
「韓国の文化では、日傘は紫外線に弱い人や中高年を連想させるため、少し気が引けつつも、自ら日傘をさしてみたのだが、影を作るという一見普通の行為の中に、自分の中に微妙な安らぎと安定感を発見した。」と話すSeoheeは、日傘とそれを使う人々が着用している衣服の布地の興味深い共通点と相違点に注目したのだといいます。そこから、日傘と衣類の特性を、着用者を中心にした二分法の視点から検証したところ、日傘は直接皮膚に触れることなく個々人を物理的に隔てる一方で、衣類は皮膚に密着し視覚的に人々を他者と分け隔てていることに気づいたのです。
今回のOngoing Airは、彼女にとって初めての日本滞在であり、ワークショップとレクチャーなどの活動を通じて地元の人々と積極的に交流し、日本語を学ぶことも率先して実践してきました。この実践は象徴的な行為とも捉えることができ、日傘を通じ彼らの創り出す影に参加するための自分のスペースを拡大し、相手の懐に飛び込む可能性を高める最も力強い方法となりました。今回発表する衣服を解体して作り上げた日傘は、他者に近づくことを通し、個人的な空間の概念がどのように変動するのかを視覚的に訴えかけてくるかのようです。
展覧会のタイトルである「Swing Sewing」は、傘をさして動く人々のリズミカルなイメージと、生地を縫うことで自由自在に動く日傘のシルエットの形を反映しています。伝統的な衣服によって確立された空間の境界を取り崩し、「日傘」で置き換えることによって、個人の境界線の流動性と適応性を検証する参加型プロジェクトにもなっているのです。
Seoheeは、今回の6日間の展示期間中に観客が作品の共同制作者となる状況を用意しました。日本の90年代の空気感そしてDIY精神に惹かれたSeohee Kimと一緒に、未完成の日傘の生地に自分なりの方法で布片をつなげていくプロセスに参加し共に作り上げて行きませんか? ぜひこの機会に、多くの皆様のご来場をお待ちしています。
( Art Center Ongoing 呂青 )
Sound: Jaehyun Kim
Video edit: Seoyoung Kim
Graphic Design: Minjong Kim